「世界の裏側に広がるのは、絶望か、それとも可能性か――『Dジェネシス』が描く現代×異界テクノファンタジー」

「なんだこれ……金属じゃない。これは“答え”そのものだ」

手にした物質の不自然な輝きに、芳村は一瞬だけ言葉を失った。

『Dジェネシス』（著：之貫紀）は、現代社会と異世界ダンジョンが交錯する新感覚のサイエンス・ファンタジー。物語はもはや「ゲーム感覚」や「冒険譚」の枠を超え、人類の存続、科学の探究、そして政治的駆け引きへと深化していく。

本巻での焦点は、“核の消失”という世界的パラダイムシフトに直面する人類の混乱と、その裏で静かに、だが確実に進行する「ダンジョンという異質なシステム」の変容だ。

芳村たちは、単なる冒険者ではない。現実逃避とされながらも、彼らは世界の核心に迫る“観測者”であり、時に“選択者”となる。

今回、彼らが手に入れた未知の“ファンタジー金属”は、まさに文明の根幹を揺るがす存在だった。その金属が持つ超自然的性質により、従来の物理法則では説明できない“通話可能なダンジョン”という次元の狂いが発生する。

これが偶然なのか、ダンジョン側の意図的な干渉なのか――その緊張感が物語全体に影のように張り付く。

世界は「平穏を装っている」に過ぎない。各国首脳陣の“沈黙”と“圧力”の裏側では、情報工作と軍事的思惑が蠢き、芳村たちの行動一つで国際バランスが崩れかねない。だが、そんな中でも彼らは進む。“知りたい”という本能に従って。

『Dジェネシス』の魅力は、何といっても“科学×異界”の境界をあいまいにするアイディアの豊かさと、読者の知的好奇心を揺さぶる情報設計にある。魔法と科学、神話と論理、ダンジョンと現実。相反する概念が同居するこの世界観に、理性が飲み込まれそうになる。

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人類が踏み込んだ異界の深層。

それは希望なのか、警鐘なのか――

『Dジェネシス』は、読者にその問いを突きつけてくる。

そして、その答えを求めて、ページをめくる手が止まらなくなる。

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