「『本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生』――この世界で“自分らしさ”を貫くために、少女は祈り、学び、そして恋を知る」
「……婚約者を決めるなんて、そんなの、わたくしには……」

ひんやりとした貴族院の回廊。
窓辺に立つハンネローレの目には、迷いと戸惑い、そしてわずかな決意の光が宿っていた。
『本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生』(著:香月美夜)は、人気シリーズのスピンオフにして、ローゼマインの親友であるハンネローレが主人公を務める珠玉の“貴族青春譚”。
彼女は“女神の化身”と呼ばれるローゼマインの親友。
高貴な立場と格式の中で、決して自分勝手な振る舞いは許されない。
けれどもその中で、ハンネローレは自分の「信じるもの」を抱きながら、必死に足元を確かめて歩いている。
五年生という節目。
貴族社会では「婚約者を決める」時期。
形式的な政治判断で、少女の将来が決まってしまう世界。
その中で「この人なら」と思える相手を選ぶには、想像を超える勇気が必要だ。
――そして、そんな彼女が頼れるのは“あの人”。
ローゼマイン様。
「わたくし、決められないのです。誰かのために生きることは、大切だと分かっています。でも、わたくしは……わたくしも、“本”を読みたいのです」
この一言がすべてを象徴している。

この巻では、政治・儀式・教育の場面に加え、恋愛の揺らぎや、友情の深化、そしてハンネローレが自分の「意思」を持つことの大切さを描き出す。
- 貴族院という閉じられた知の空間の中で、少女たちは何を思い、何を選ぶのか?
- 書籍を通して心を育てた少女が、社会という現実の中でどう生きるのか?
- 誰の庇護もなく、はじめて「自分自身の選択」に向き合う勇気とは?
この物語の素晴らしさは、単なる成長譚ではない。
ハンネローレという一人の少女が、社会の期待と自分の欲求の間で、徹底的に“悩み抜く”ことを描いている点にある。
これは“模範解答”をくれる物語ではない。
読者に、「自分だったら、どうする?」と問いかけてくる作品だ。
ローゼマインの影響で“知識”と“信念”を手にしたハンネローレは、今まさに“決断”のときに立たされる。
登場人物たちの言葉がひとつひとつ、胸に刺さる。
誰の選択も間違っていない。けれど、それでも自分の道を選ばなければならない――そんな優しくも厳しい世界。
■ 本作の読みどころ:
- “読み書き”ができるというだけで、少女の世界はこうも広がるのかと感動する。
- サブキャラとして描かれていた彼女の背景が、丁寧に膨らませられ、一人の主役へと昇華する。
- 貴族のしきたりや制度、名家の思惑が複雑に絡み合うリアルな“婚約戦”の描写も圧巻。
- 本好きならではの“書庫描写”や“魔術の理論展開”も健在。設定に手抜きがない。
このシリーズは、“文字を読む力”が、いかに人を育て、世界を変えていくかを描いたファンタジーであり、“静かなる革命”の物語でもある。
ハンネローレは叫ばない。
剣を振るわない。
でも、彼女の心の奥底にある“まっすぐな願い”は、誰よりも強く、まばゆく光る。
「貴族である前に、人間でありたい」
その願いは、読者の心にも真っすぐ届く。
■ 試し読み対応サイト:
- 【DMMブックス】 https://book.dmm.com/
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シリーズファンはもちろん、初めて読む方でも楽しめる“貴族社会×本好き”の新たな物語。
少女は選ぶ。
“愛”のために、“本”のために、そして――“自分自身”のために。